災害ボランティアに参加して
例年、スピーチフォーラムの翌日は観光して帰路に着く流れですが、参加利用者との最終的な詰めの話し合いを重ねていたところ、10月初旬になって、この時期に千葉県に行くなら観光ではなく、ボランティア活動をしたい、スピーチフォーラムの後だからこそボランティア活動をすることに意味があるのではないかという意見が上がり、急遽ボランティア先を探すことに。最初は横浜市社協を通じ、その後知人を介すなどして千葉県社協の災害ボランティアセンター等色々問い合わせるも行先が決まらず、途方に暮れていた時に、11月5日(火)朝のTVのニュースで、千葉県長柄町では未だにボランティアが足りていないことを知り、長柄町社協に連絡をとってみたところ、泥掻きのような仕事でもよければ大歓迎、と言っていただき、ボランティアができるようになりました。
行きの車中で千葉県に入った途端、ブルーシートの屋根や根元から折れ曲がっている看板、がけや山間部で崩れている木々を見て色々感じたようで、外の景色を見ながら職員に声をかけてくるなど、お互いに感想を言い合うなどしていたのが印象的であった。
スピーチフォーラムでの務めを無事果たし、翌朝8時に宿泊地の鴨川を出発。バスで1時間半程走り、長柄町社協に到着。
広い駐車場は既に車両で埋め尽くされており、またいくつかの大学のマイクロバスも来ていた。最寄り駅の外房線茂原駅との間にボランティアバスが午前3便、午後3便の計6便が運行。その都度かなりの人数が降り立っている様子であった。ボランティアに来る人も大勢いたが、受け入れ側も町役場や社協、町の福祉センターの職員、町内会の人達、赤十字奉仕団の人達など、大勢のボランティアで運営されていた。
受付で名前と生年月日、血液型、保険の加入の有無を名簿に記入。更に名札シールを渡され、名前と血液型を記入後、胸又は腕に貼って、オリエンテーション用のテントで待つよう指示を受ける。オリエンテーションで注意事項等の確認をし、その後マッチングの部屋へ。マッチングの部屋では、軽トラで来ている人、自分の車に居合わせた人同士乗りあって現地まで行ける人、誰かに送ってもらわなければならない人など、行先ごとに番号を振られてグループを分けられていく。
行先が決まると、次は道具の貸し出しの部屋に移動。仕事の内容で貸し出される道具と数を確認。きちっと返却されるよう貸出表の写真を撮った上で一式を渡される。その部屋を出ると、水やスポーツドリンク・防塵マスクなどを渡され、いよいよ出発。
歩は全員で活動するも可、3人から5人くらいのグループに分かれて活動も可と予め話していたが、当日は乗馬クラブから広大な敷地に大人数での泥掻きの依頼が入ってきたようで、全員で乗ってきたバスで現地まで移動。バスは奥まで入れない為、途中からは荷物を持って徒歩で現場へ向かう。
ボランティア受付から現地到着まで約1時間が経過。大きな災害の際のボランティア受け入れの大変さを実感。利用者が先の見えない中で騒ぐことも無く、根気よく素直に「待たされる」ことができていたことに感心。
社協から渡された現地の事前調査シートには、屋内の流木等を撤去すると家が崩壊する危険があるため、ボランティア先の家屋内への立ち入りは禁止と書かれており、現地に着いて実際山が大きく崩れている様子と、土砂や流木が流れ込んでいる家を見て、皆息を飲んでいる。
依頼主の方から馬が興奮してしまうので大きな声や音を立てないようにとまず注意を受けたうえで「何をどうするのか」実演を見ながら説明を受けたのだが、始めは職員も説明の意味が全く分からなかった。
何故なら、「ここの泥掻きをしてください」と言われているにもかかわらず、足元も含め「どこに掻くような泥があるのか?」と言うくらい、水分を含んだ土ではあるが、足元は普通に平らだったから。しかし言われたからには、取り敢えず指示されたところにスコップや鋤を入れていくしかないと、少し騙されたような感じで動き始めた。
が、皆すぐにとんでもないことになっているということに気が付く。
土砂崩れに加え、大量の水が川のように流れた後だったので、元々の地面の上に細かい泥砂が、30cm以上「積もって」地面が嵩上げされており、我々の作業は人力で元の嵩に戻すことだった。スコップや鋤を入れた時の手応えを頼りに泥をすくったり搔いたりし、バケツや一輪車で所定の場所に捨てに行く。お互いに声をかけ合い、協力し合いながらひたすら、鋤で削りスコップですくう作業を休憩を挟みつつ、3時間ほど行った。
当初しっかり出来るのか心配であったが、皆が本当に黙々と作業をしている姿に思わず本気で心を打たれた。特に一輪車の扱いに関しては、職員など足元にも及ばないくらい上手な利用者がいて、バケツに土砂を入れる際も女性が持とうとすると「腰、気を付けて」とか「少な目に入れないと持ちきれないから」と入れる量を配慮するなど、そこには職員と利用者という立場の違いはなく、同じ19名のボランティア集団の一員同士、職員と利用者が頼り頼られ、助け助けられるという関係性を双方で実感できたのは、とても幸せな瞬間だったと思う。
社協に戻り、道具を洗い、貸出表と照らし合わせて返却。手を洗って消毒、うがい、長靴の泥を洗い落とした後、長靴をはいたまま消毒槽を通り、ボランティア活動証明書を頂き、ボランティア活動は終了。帰りのバスは皆疲れ果てたのか、ぐっすり寝て帰路に着いた。
ボランティアに参加する前は、海岸や河川敷等の流木集めやごみ拾いのようなイメージでボランティア活動を想像しており、泥掻きと言われてもその違いがあまり分かっておらず、「ブルーシートで覆われている屋根の修理」とか、「流木に押しつぶされている家の泥掻きや掃除」「浸水でドロドロに汚れた家具の運び出し」など、報道などで扱われるような、一目でわかりやすい被災の様子やそれらの手伝いもさることながら、実際に作業で訪れなければなかなかわからないような目立たないところに甚大な被害の実態があり、そのようなところにものすごい人手が必要なのだということが実感として分かった。
参加した利用者達からも「TVで見るのと生で見るのは違った。」「疲れたけど楽しかった、人の役に立てるのは嬉しい。」「実際に行って、やってみて大変さがわかった。」「手伝えて良かった。」「会社で誉められた。」などなど、自分たちで言い出した手前もあったと思うが、「生で見て、、、」「実際に体験して、、、」というような表現がそれぞれの口から何度も出ており、彼らなりに色々と感じるものがあったのかと思います。
今回の貴重な経験を通じ、歩利用者の更なる飛躍を期待します!!